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はじめに

政策金利の25bp引下げを決定した12月のFOMCでは雇用の下方リスクの強まりが共有された。また、FOMCメンバーのほとんど(most)が、物価が見通し通りに減速すれば、今後も更なる利下げが適当との見方を示した。

経済情勢の評価

FOMCメンバーはインフレ率が上昇し、2%目標に比べて幾分高い点を確認した。ほとんど(most)のメンバーが関税引上げのコアインフレへの影響を指摘した一方、数名(some)は住居費がインフレ率が2%近傍にあった時点まで減速した点を指摘した。また、数名(a few)は非市場性のサービス価格への特殊要因の影響を挙げた。

今後については、2%に向けて緩やかに低下する前に高止まるとの見方を広く(generally)共有した。多数(many)のメンバーは関税引上げの影響の減衰を示唆したが、数名(some)は影響の程度や時期に関する不透明性を指摘した。また、数名(some)が関税引上げによる投入コスト上昇の継続を指摘した一方、需要の弱さによる転嫁の困難さや生産性の上昇による吸収も指摘した。一方、大多数(majority)のメンバーは、住居費の減速に期待を示したほか、数名(a few)はコアサービスのディスインフレにも期待を示した。

FOMCメンバーは、市場ベースとサーベイベースの長期のインフレ期待が安定している点を確認した。もっとも、数名(a few)のメンバーは短期のインフレ率が年前半から高止まっている点を指摘したほか、数名(some)は目標以上にインフレが高止まり続けることが長期インフレ期待の上昇を招くリスクを指摘した。

物価情勢の評価

FOMCメンバーは経済活動が緩やかに拡大した点を確認した一方、数名(several)は政府機関閉鎖による統計の振れによって、今後の経済成長の基調を判断することが困難との見方を示した。

家計については、多く(many)のメンバーが消費の強さを指摘したが、数名( several ) は減速の兆しを指摘した 。また、大多数(majority)は、高所得層の消費の強さに言及しつつ、低所得層は価格感応度を強め、過去数年の財やサービスの大幅な価格上昇に対し支出を調整していると指摘した。また、2名(a couple of)は、住宅市場の安定の兆しと金利低下による効果を示唆した。

企業については、数名(some)のメンバーがITを中心とする力強い投資が経済活動を支えていると指摘した一方、2名(a couple of)は、農業部門がコスト上昇や加工能力減少に直面していると指摘した。

今後は経済成長が加速し、中期的にも潜在成長率近傍で成長するとの見方を広く(generally)共有した。メンバーの多く(many)は財政政策、規制緩和、金融環境の緩和に期待を示した。もっとも、見通しに関する不透明性の高さも確認し、多数(a number of)はAIの活用による技術革新や生産性の上昇等が、インフレを伴わずに経済成長を促進する一方、雇用を抑制する可能性を指摘した。

FOMCメンバーは、失業率が微増するなど労働市場の軟化が続いた点を確認した。ほとんど(most)のメンバーは、サーベイやlay offの計画をもとに、労働市場の軟化の継続を示唆したが、数名(some)は新規失業保険の申請件数や求人関連の指標の安定を指摘した。

また、雇用活動が弱い点を確認したほか、数名(several)は、低所得層で雇用の先行きへの懸念が強い点を指摘した。その上で、労働市場の弱さは、経済の不透明性や企業のコスト削減を映じた需要の弱さと、移民の減少や人口の高齢化、労働参加率の低下を映じた供給の弱さの双方に基づくとの理解を広く(generally)共有した。

労働市場の今後については、適切な金融政策の下で来年には安定するが、特に政府統計の公表の遅延の下で見通しは不透明との見方を広く(generally)共有した。

金融政策の運営

FOMCメンバーは、インフレ率がやや上昇し高止まる一方、経済活動は緩やかに拡大したが、雇用が減速し、失業率が微増した点を確認した。その上で、雇用の下方リスクが高まったと判断し、政策金利の25bp引下げを決定した。

殆ど(most)メンバーが今回の利下げを支持した一方、数名(some)は現状維持を支持した。また、利下げを支持したメンバーのうち数名(a few)は微妙な判断であり、現状維持を支持した可能性を示唆した。

利下げを支持したメンバーは、雇用の下方リスクが上昇し、インフレの上方リスクが下落ないし変わらない下で、利下げが適当との見方を広く(generally)共有した。これらのうち数名(some)は利下げが政策目標の達成に向けたフォワードルッキングな政策運営に沿ったものと主張し、インフレの減速の下での経済活動の回復による労働市場の安定という見通しと整合的と指摘した。

現状維持を支持したメンバーは、インフレ目標に向けた収斂の停滞に懸念を示し、持続的な収斂に関する確信が必要と指摘した。また、インフレの高止まりが長期インフレ期待の上昇に繋がるとの懸念を示し、利下げの合理性を判断する上で、今後のデータが有用との見方を示した。さらに、数名(a few)は、足元のデータは労働市場の一段の悪化を示していないと主張した。

今後については、ほとんど(most)のメンバーが、インフレが見通し通り減速すれば、更なる利下げが適当と指摘した。もっとも、数名(some)は当面は現状維持が適当との考えを示し、このうち数名(a few)は利下げの労働市場や経済活動の効果を評価し、インフレの2%目標への収束への確信を得る上で、そうした対応が適切との見方を示した。

リスクマネジメントについては、FOMCメンバーは、インフレの上方リスクは引続き高く、雇用の下方リスクも引続き高い上に年央以降に強まったとの見方に広く(generally)合意した。その上で、メンバーのほとんど(most)が今回の利下げが、労働市場の顕著な悪化を防ぐのに有効と指摘したほか、その多く(many)は関税引上げが持続的なインフレ圧力になる可能性は低下したとの見方を示した。

これらのメンバーは、今回の利下げが政策目標の達成に関するリスクをより良いバランスに調整することに資すると主張し、今後の政策金利の更なる調整の程度や時期を判断するのに良い立場をもたらすとの考えを示した。これに対し、数名(several)のメンバーは、インフレのリスクが定着する可能性を指摘し、更なる利下げはインフレ目標の達成へのコミットメントが低下したとの誤解を招くと主張した。

プロフィール

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    井上 哲也

    金融イノベーション研究部

    

    内外金融市場の調査やこれに関わる政策の企画、邦銀国際部門のモニタリングなどを中心とする20年超に亘る中央銀行での執務経験と、国内外の当局や金融機関、研究機関、金融メディアに構築した人脈を活かして、中央銀行の政策対応(”central banking”)に関する議論に貢献。そのための場として「金融市場パネル」を運営し、議論の成果を内外の有識者と幅広く共有するほか、各種のメディアを通じた情報と意見の発信を行っている。2012年には、姉妹パネルとして「バンキングパネル」と「日中金融円卓会合」も立ち上げ、日本の経験を踏まえた商業銀行機能のあり方や中国への教訓といった領域へとカバレッジを広げている。

※組織名、職名は現在と異なる場合があります。